東京下流人日記|ワーキングプア脱出をめざす自宅警備員の生活と意見、時事議論、書評など

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がんばれ、陰謀史観。

|2014年11月17日 23:20| 個別ページ | コメント(0) | トラックバック(0)
日本経済の閉塞の原因は、新自由主義、市場原理主義にあるとして、それを糾弾する内容である。
アメリカはそのイデオロギーをもって、日本を侵略している。日本1994年よりに「年次改革要望書」を送り、日本の社会経済体制をアメリカ型にするよう要求してきた。それに乗っかったのが小泉元首相であり、それを実行しているのが官僚であり、与党政治家であり、またそれを宣伝するのがマスコミである。現在、安部総理がすすめているTPPは日本の経済を破壊する悪魔の契約であると非難する。

しかし、著者のいうことがほんとうだとしたら、総理大臣や与党政治家、官僚、マスコミはいとも簡単にアメリカに洗脳され、アメリカの手先となって日本経済の破壊活動に励むのか。著者のいうことが正しいのなら、日本の政治家と官僚がみんな馬鹿である。


そして、日本の富は略奪される--アメリカが仕掛けた新自由主義の正体
菊池英博
つまり、議論があまりにも一方向から見た片寄ったものになっており、反対意見にまったく耳を貸さず、耳を貸す気もなく、思い込みですべてを語っているのだ。本の内容はいい面もたくさんあるが、トータルでみれば、議論の短絡が目立つ。

これは、残念なことに多くの陰謀史観を説く人の主張に共通してみられる特徴である。どこに問題があるのか、考えてみるのも有意義だと思う。

彼らの思考のひとつの典型は、反経済である。そして、アメリカが日本の富を略奪しているという(根拠が薄弱な)信念である。その信念には、ひとつのパターンがある。


バ ブルのころ、日本が外貨を稼ぎ、十分に金持ちだったのだが、なぜ、日本はそれを有効活用できなかったのか、という思いである。日本は世界最大の債権国で あった。日本には富がうなっていたのだ。それはどこに行ってしまったのか。こう問うとき、彼らはその答えをアメリカの陰謀に求め、短絡的にそれを信じる。 そして、すべてをアメリカのせいにし、あるいは新自由主義のせいにしている。

しかし、そこにある重要なポイントは国際マクロ経済学につい ての無理解である。私もよく理解していないが、昔、小宮隆太郎の本を読んだことがある。そのおぼろげな記憶によれば、貿易収支の赤字は悪いことではなく、 黒字はいいことではないということだ。これは理解しにくいが、ここに重大な無理解がある。


国際マクロ経済学からいって、外貨を稼いだら、どうなるのか。
日本が外国に対して債権をもつだけで、それ以上でも、以下でもない。
仮に、トヨタが外貨をもっているとしたら、為替市場で円に両替する。
そして、円で使う。
もちろん、それでアメリカの国債を買うこともできる。
金融商品を買うのも自由だ。
それをもって、アメリカに富が奪われたというのはおかしい。

経済において一方的な収奪はありえない。
日本の外貨がアメリカに流れたとき、必ず、逆にアメリカから日本に流れているものがある。上記の例では、日本はバッグを得ている。
売りがあれば、必ず買いがある。それはケインズもいっている。
日本の郵貯のお金がアメリカに流れたとき、日本はアメリカの国債を手に入れている。
それが、日本の経済にとってプラスかマイナスかは検証しなければわからない。
したがって、一方的に外貨を盗まれたようないい方は不当である。

それよりも、日本が外貨を貯めつづけたのが異常である。
バブル崩壊のころまで、日本には十分に金はあったのだが、
それを国民、あるいは企業が使わないのが悪い。
いや、使わないのは国民ではなく、企業だろう。
金を使えば、需要がふえて、経済は回る。
ケインズがいったように、それは穴を掘って埋めるだけでもいい。
使い道は何でもいいから、とにかく使えばいいのである。
それを使わないから、国民が豊かにならない。

それに対して、アメリカはバイ・アメリカを主張する。
日本がアメリカの商品を買うべきかどうかは別にして、
外貨を貯めまくる行為は、日本の勝手であるが、
同時に国際問題でもある。
そこにある問題が、きちんと理解されていない。
それが、問題なのだ。

陰謀論者りはそこのところを明確に理論化する努力を怠るべきではない。
それをしないと、いつまでたってもアメリカに収奪されるという見方から
抜けることはできないし、その状況を改善することもできないだろう。
がんばれ、陰謀史観論者。

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