書評『若年非正規雇用の社会学』太郎丸博
この本は、非正規雇用の問題を社会学の階層論から研究した学術書である。
内容的には、研究史など予備的なことがしっかり押さえられており、非正規雇用を研究する人には必見のものである。
非正規雇用と正規雇用の格差がなぜ、大きいのか、あるいは両身分の移行がなぜ困難なのか、この2つの点を重要な問いとして提示されているが、そうした問いこそが、この本の結論である。ここが、非正規雇用の問題を考える上での出発点となる地点である。
この問題は、もはや猶予が許されない、緊急性をもつ問題である。しかし、有効な解決策は、政治や経済から出されていない。では、社会学は出せるのか。関係するあらゆる学問分野で考えなければならない問題である。
興味深い知見が散見される。たとえば、次のようなものである。
非正規雇用にまつわる問題とは、正規雇用と非正規雇用の間にある賃金とフリンジベネフィットの格差であり、両者のあいだの移動が困難な点である。それゆえ、問題はどうすれば格差が縮まり、移動が容易になるかである。これを明らかにするためには、なぜ格差が存在し、なぜ移動が困難なのか、そのメカニズムを徹底的に解明しなければならない。
[太郎丸2009:192]スウェーデンでは臨時雇用の比率は高いが、手厚い失業保険と職業訓練プログラムによって労働者は守られているし、オランダでは、非正規雇用と正規雇用の間で賃金や労働条件の格差をつけることを禁じている」。「韓国では時給換算で見れば、正規雇用と非正規雇用の間の賃金格差はわずかであるし、台湾では非正規雇用の比率がそもそも非常に低い。
[太郎丸2009:152]日本の大企業は労使協調路線が一般的であるが、それは会社を家族にみたてた企業コミュニティの存在が前提となっている。しかし、明らかに非正規雇用労働者は、会社という家族の一員ではなくアウトサイダーである。
[太郎丸2009:191]
★★★★大学生・院生向き
|
若年非正規雇用の社会学‐階層・ジェンダー・グローバル化 (大阪大学新世紀レクチャー) 太郎丸 博 大阪大学出版会 2009-06-04 |
次の記事 → 書評 『私家版・ユダヤ文化論』 内田樹
前の記事 ← 書評『格差社会 何が問題なのか』橘木俊詔





