東京下流人日記|ワーキングプア脱出をめざす自宅警備員の生活と意見、時事議論、書評など

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リーディングス格差を考える、書評

|2009年3月11日 22:29| 個別ページ | コメント(0) | トラックバック(0)

リーディングス格差を考える
伊藤元重編

この本のなかにも大竹文雄氏の論文がのっていたので、読んでみた。格差は世代間の問題であるというのが、その主張である。やや書かれたのが古いので、現在の問題系に一致しているわけではないが、わかりやすい内容であった。

大竹文雄「格差問題解決の本当の処方箋」『フォーサイト』2007年7月号

ただ、この問題はきわめて短サイクルでみたときの「いま」の問題である。2007年のサブプライム問題に端を発する景気悪化のなか、2008年末に派遣切りが社会問題となった。その時点で、問題は新たな局面を迎えているような気がした。

この本は、伊藤元重が編集した格差に関する文章を集めて、編集したものである。セレクトショップのような雰囲気になっている。アカデミックな論文というよりも、雑誌にのせた論説文を集めたような内容である。上質な印象を受けた。

ただ、格差という切り口自体が、あまり適切な切り口であるとはいえないように思われる。格差という問題を最初にしっかり扱ったのは橘木俊詔らしい。また、格差というのは事実として、少しずつ大きくなっているらしい。その原因については、完全に一致した見解があるわけではない。

現在、書店でこのたぐいの本を見ていると、格差というテーマに近いものとして、貧困、不平等、下流、ニート、非正規雇用といった問題がテーマとしてある。これらは、同じ問題を異なる切り方によってテーマ化し、切り取ったものである。

そのなかでも、格差というテーマ設定はどうも焦点がぼやけているような気がする。格差というテーマを立てる前提にあるのは、日本が平等な社会であるという考え方である。平等信仰を信じている人には、格差というテーマは切実だろう。しかし、いまのニートのような若者は、平等信仰など信じていない。だから、前提となる部分で意識が異なるのではないか。

格差というテーマの立て方が、問題をぼやけさせている。問題は派遣であり、派遣の裏側にある正社員の過剰な保護である。正社員の過剰な保護が、労働市場を歪めており、そこに日本的雇用の問題の根本がある。

そうした根本に鋭く迫ろうというときに、格差というテーマ設定はきわめて迂遠である。それでもなお、大竹文雄は、きちんと鋭く問題の中心に迫っていると思う。

リーディングス格差を考える
日本経済新聞出版社
2008-12


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